「ハラスメントは人生を壊す」——私が声を上げた理由
私は、ハラスメントや不適切な指導を絶対に許せません。
それは理屈ではなく、私自身がその被害を受け、うつ病を発症してしまった当事者だからです。
ハラスメントは、被害者本人だけでなく、その家族や仲間の人生までも深く傷つけてしまう。
私はその現実を、身をもって体験しました。
飲食業時代——「うつ病」と知らずに苦しんでいた日々
飲食業で働いていた当時、私は「うつ病」という言葉すら知りませんでした。
ただ、心も体も疲れ切っていて、朝になるとベッドから起き上がれない日が増えていった。
それでも、「仕事だから」「迷惑をかけちゃいけない」と自分を奮い立たせて出勤していました。
原因は明らかでした。
新店舗の立ち上げを担当していたプロデューサーからの、日常的なハラスメントです。
他の社員の前で侮辱される。
人としての尊厳を否定されるような言葉を浴びせられる。
そんな日々が続き、私は限界を感じて、勇気を振り絞って義理の兄である社長に相談しました。
「もう耐えられません。助けてください」と。
しかし、返ってきた言葉は——
「我慢してくれ。」
その瞬間、心の中で何かが壊れた気がしました。
会社は私を守ってくれなかった。
自分の声は届かないんだ——そう感じたあの日のことを、今でもはっきり覚えています。
開業当初から、会社と義理の兄のために必死に働いてきました。
「会社を大きくしたい」「恩返しがしたい」——その一心で頑張ってきたのに、
その一言で、ピンと張っていた糸が一気に切れてしまいました。
そして、私は会社を去る決意をしたのです。
ハラスメントは「人生を壊す」
この経験を通して、私は痛感しました。
ハラスメントは、単なる職場のトラブルではありません。
人の人生を根底から壊す行為です。
自分の価値を疑い、
人を信じられなくなり、
やがて「自分なんていない方がいい」と思うようになる。
その影響は被害者だけにとどまりません。
私を支えてくれた妻や子どもたちも、私の苦しみに巻き込まれ、心を痛めていました。
家族の笑顔が消えていったあの時間を、今でも思い出すと胸が締めつけられます。
「人を思いやれない人」とは一緒に働けない
この出来事をきっかけに、私ははっきりとした価値観を持ちました。
それは——
どれだけ仕事ができても、人を傷つけるような言動をする人とは一緒に働けない、ということ。
仕事の能力や肩書きよりも、人としての思いやりの方がずっと大切。
それを忘れた人がリーダーになると、職場はあっという間に壊れてしまいます。
私はそれを実際に見てきました。
だからもし今、目の前にハラスメントをしている人がいたら、
たとえ相手が上司であっても、こう伝えたい。
「あなたのその指導は間違っています。」
感情的にぶつかるのではなく、冷静に、事実をもって伝える。
それが、あの時の自分ができなかった“声を上げる”という行動の代わりでもあるのです。
家族を思うと、声を上げることは怖い
正直に言えば、迷いもありました。
今は家族と共に暮らし、妻や子どもの笑顔を守ることが一番大切。
だから、「もう波風を立てたくない」という気持ちもありました。
声を上げることで仕事を失うかもしれない。
周囲から誤解されるかもしれない。
そのリスクを考えると、躊躇するのは当然です。
それでも——私は伝えました。
「あなたの指導は、ハラスメントです。」
その一言は会社を巻き込み、大きな問題となりました。
怖かったし、不安もありました。
けれど今振り返っても、あの時の自分を誇りに思います。
なぜなら、それは“過去の自分を救う行為”だったから。
そして、同じように苦しんでいる誰かのために、
「間違っていることは間違っている」と伝えたかったからです。
最後に——「黙ること」は優しさではない
あの頃の私は、「耐えることが正しい」「波風を立てない方が大人だ」と思い込んでいました。
でも、それは違いました。
黙ることは優しさではなく、加害者を助けてしまうことだったんです。
今だからこそ、あの時の自分に伝えたい。
「よく頑張ったね。もう大丈夫だよ」と。
そして、同じように苦しんでいる人に、心から伝えたい。
あなたの感じている苦しみは、あなたのせいじゃない。
あなたは間違っていない。
次回は、私が実際に声を上げたことで会社がどう動き、どんな結末を迎えたのかをお話しします。
もし今、同じように苦しんでいる方がいたら——
その記事を、ぜひ読んでほしい。
あなたの勇気が、きっと誰かを救います。

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