仕事中にケガが起きたら?店・会社側の対応と労災保険の基本

労災・健康管理

こんにちは、nobuです。

包丁で指を切った。熱い油でやけどをした。そんなとき、お店や会社ではどう対応していますか?飲食店では、身近な作業の中にもケガの危険がありますよね。私自身も、仕事中に油が手にかかり、病院で治療を受けた苦く痛い経験があります。

今回は、ケガが起きた直後の対応から、労災保険の手続きまで、店長や経営者が知っておきたい基本を整理します。対応の順番を確認したり、事故の状況を記録したりするときに使える無料PDFも紹介していますので、もしものときの備えとして、ぜひご覧ください。

仕事中にケガが起きたときの対応

忙しい時間帯でも、ケガをした人に無理をさせないことが第一です。「これくらいなら大丈夫」と仕事を続けさせず、まず状態を確認しましょう。

  1. 安全を確保する
    作業を止め、周囲の危険を取り除きます。必要な応急処置を行い、急いで救助や治療が必要な場合は救急車を呼んでください。
  2. 必要に応じて病院で診てもらう
    病院などには「仕事中のケガ」であることを伝えます。書類の準備や労災に当たるかの確認を理由に、必要な治療を遅らせないようにします。
  3. 事故の状況を記録する
    いつ、どこで、どのような作業中に、何が起きたのかを整理します。本人の対応を優先しながら、事故を見ていた人の話や現場の写真なども残しておきましょう。
  4. 手続きと仕事を休む状況を確認する
    診てもらった病院、ケガの状態、仕事を休む必要があるかを確認します。労災保険の請求を支え、会社からの報告が必要かも確認してください。
  5. 復帰を支え、同じ事故を防ぐことにつなげる
    本人の状態や医師の指示に合わせて、仕事の内容を調整します。あわせて事故の原因を振り返り、同じケガを防ぐための改善を進めます。

現場で使える対応フロー・確認シート

事故が起きたときに対応を確認できるよう、A4・全3ページの無料PDFにまとめました。1ページ目が対応の流れ、2〜3ページ目が事故の状況を記録する確認シートです。

飲食店で労災が起きたときの対応フロー・発生状況確認シート

印刷して、事故直後の対応確認や状況の記録にご活用ください。


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※店舗内での確認・記録に使う資料です。労災保険の請求書や、労働基準監督署へ提出する報告書の代わりにはなりません。

労災保険の手続きで知っておきたいこと

労災保険は、仕事や通勤が原因のケガ・病気などに対して、治療や仕事を休んでいる間の生活を支える制度です。正社員だけでなく、アルバイトやパートも対象になります。

ここでは、店舗の仕事が原因で起きたケガ、つまり「業務災害」の基本を説明します。

会社の判断で「労災ではない」と決めつけない

仕事中にケガが起きたとき、「本人の不注意だから労災ではない」と、会社の判断で手続きを止めないようにしましょう。労災保険による治療費や休業中の補償などを受けられるかどうかは、本人の請求を受けて、労働基準監督署長が調べて決定します。

「労災として処理したくない」という会社の都合で、本人の請求を妨げることもあってはなりません。必要な治療や補償につながらず、従業員が不利益を受けるおそれがあることを忘れないでください。

会社は事故の状況を整理し、請求書に事故の状況などを会社として証明するなど、必要な手続きに協力することが大切です。もし判断に迷う場合は、お店の所在地を担当する労働基準監督署へ確認してください。

仕事が原因のケガに健康保険は使わない

労災保険の対象となるケガについて、会社や本人が健康保険と労災保険を自由に選ぶことはできません。病院などで診てもらうときには、仕事中に起きたケガであることと、その状況を伝えてください。

労災保険指定医療機関(労災保険で治療を受けられる指定の病院など)では、決められた手続きによって、原則として労災保険の対象となる治療を窓口で費用を払わずに受けられます。指定を受けていない病院などで診てもらった場合は、いったん治療費を支払い、あとから労災保険へ費用を請求する方法があります。

ただし、指定の病院などを探すために、緊急の治療を遅らせる必要はありません。誤って健康保険を使った場合は、診てもらった病院などと加入している健康保険の窓口へ連絡し、切り替えの手続きを確認しましょう。

仕事を休む場合は、最初の3日間と4日目以降で扱いが違う

仕事が原因のケガを治すために働けず、給与を受け取れない場合には、仕事を休んでいる間の補償があります。基本的な違いは次のとおりです。

休業期間 基本的な補償
最初の3日間 労災保険の休業補償給付は出ません。仕事が原因のケガでは、会社が1日につき平均賃金の60%の休業補償を行います。
4日目以降 支給の条件を満たす日について、労災保険の休業補償給付60%と休業特別支給金20%、合わせて給付基礎日額の80%が支給されます。

「給付基礎日額」は、原則として労働基準法で定める平均賃金に当たる、支給額を計算する基準となる1日分の金額です。月給や時給の80%がそのまま支払われる、という意味ではありません。

仕事を休んだ日、一部だけ働いた日、給与を支払った日などで計算や扱いが変わるため、出勤・退勤や給与の記録を整理して手続きを進めます。なお、通勤が原因のケガには、最初の3日間について会社が同じ休業補償を行う法律上の義務はありません。

労災保険の請求と、会社からの報告は別の手続き

ここは混同しやすいところです。労災保険の請求をしただけで、会社に必要な事故の報告まで済むわけではありません。

手続き 目的と、行う人
労災保険の給付請求 治療費や仕事を休んでいる間の補償などを受けるための手続き。           原則としてケガをした本人が請求し、会社が必要な証明などに協力します。
労働者死傷病報告 仕事中の事故などによる死亡・仕事を休んだ状況を報告する手続き。        会社がお店の所在地を担当する労働基準監督署へ報告します。

労働者死傷病報告の期限

店舗での仕事によるケガで従業員が亡くなったり、仕事を休んだりした場合は、労働安全衛生規則第97条に基づく報告が必要です。期限は、死亡・仕事を休んだ状況によって分かれます。

  • 死亡または仕事を休んだ日数が4日以上:遅れることなく速やかに報告します。
  • 仕事を休んだ日数が1〜3日:1〜3月、4〜6月、7〜9月、10〜12月の期間ごとにまとめ、それぞれ4月末、7月末、10月末、翌年1月末までに報告します。

「1日しか休んでいないから報告しなくていい」とはなりません。一方、死亡も仕事を休むこともなかったケガについては、この報告は原則不要ですが、労災保険による治療の対象になる場合があります。

2025年1月1日から、労働者死傷病報告は原則としてインターネットで申請することが義務になっています。インターネットでの申請が難しい場合は当分の間、紙の書類による報告も可能なので、厚生労働省の案内を確認してください。

事故を隠すために、報告しない・事実を書き換えることはできない

事故が起きたことを隠すために、労働者死傷病報告をわざと提出しなかったり、事実と違う内容で提出したりすることを「労災隠し」といいます。事故が起きた事実と必要な報告は、店の都合でなかったことにはできません。

本人が遠慮している場合も、まず状況を聞き取り、治療や必要な手続きにつなげていきましょう。

復帰を支え、同じケガを防ぐ

手続きが終わっても、本人への対応は続きます。ケガの状態や医師の指示を確認し、手をやけどした方の調理作業、腰を痛めた方の荷物を運ぶ作業など、無理なくできる仕事を一緒に考えましょう。

同じ事故を防ぐには、「本人が気をつければよかった」で終わらせないことも大切です。濡れた床を放置していなかったか、道具の使い方を教えていたか、忙しさやスタッフの配置に無理がなかったか。店として改善できることを確認します。

私も飲食店で働いていたので、忙しいと目の前の営業を優先したくなる気持ちは分かります。それでも、ケガをした人が安心して治療を受け、無理なく仕事に戻れることを大事にしたいと思っています。

まずは、ケガが起きたときの連絡先と対応の流れを、店内で共有するところから始めてみてください。

労災への備えを含め、お店の働く環境を確認したい方は、飲食店の労務セルフチェックもご活用ください。無料・登録不要で、30問から確認できます。

参考にした公的情報

制度・手続きの確認日:2026年9月。この記事は主に仕事が原因のケガなどの「業務災害」の基本を扱っています。それぞれの事故で必要な手続きは、お店の所在地を担当する労働基準監督署などへ確認してください。

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