飲食店の労災対応|事故防止・対応方法・その後フォロー

働き方

こんにちは、nobuです。

飲食店で働いていると、包丁で指を切ったり、熱い油でやけどをしたり、濡れた床で滑ったり。どれだけ気をつけていても、ケガのリスクを完全になくすことは難しいものです。

私自身も、飲食店で働いていたとき、熱い油が手にかかってやけどをしたことがあります。病院へ行き、治療を受けましたが、改めて「飲食店の仕事には、身近なところに危険があるんだな」と感じた出来事でした。

今回は、飲食店の労災リスクについて、事故を防ぐための取り組みから、実際にケガが起きたときの対応、その後のフォローまで整理します。

あわせて、もしものときに現場で使える「労災対応フロー」と「発生状況確認シート」も用意しました。

飲食店の労災は、身近なところで起きる

飲食店では、調理、洗い物、配膳、清掃、食材の運搬など、さまざまな作業が同時に行われます。特に忙しい時間帯は急いで動くことも多く、普段なら気づける危険を見落としてしまうこともあります。

  • 転倒
    濡れた床、通路の荷物、段差などで滑ったり、つまずいたりする。
  • 切り傷・こすれ
    包丁やスライサー、割れたグラス・食器などで手を切る。
  • やけど
    熱い油、熱湯、鍋、鉄板などに触れてしまう。
  • 腰痛・無理な動作
    重い食材の運搬や、無理な姿勢での作業によって身体を痛める。

どれも飲食店で働いていれば、一度くらい「危なっ」とした経験があるのではないでしょうか。

こうした事故は、特別な作業をしているときだけではありません。毎日の当たり前の仕事の中に、リスクは潜んでいます。

事故を防ぐために、普段からできること

労災対策というと、大がかりな設備投資や難しいルールを想像するかもしれません。

でも、まずできるのは「いつもの現場」を少し見直すことです。

1.床や通路を安全に保つ

水や油で濡れた床は、気づいたときに清掃する。通路に荷物を置きっぱなしにしない。滑りにくい靴を使うなど、転倒を防ぐための環境を整えます。

「いつもここ滑るんだよな」

そんな場所があるなら、もう改善ポイントは見つかっています。

2.包丁や機械を安全に使えるようにする

包丁の置き場所を決める、割れた食器を素手で拾わない、スライサーなどの機械は正しい使い方を教える。

特に新人の方には、「見て覚えて」だけではなく、どこが危ないのかまで伝えることが大切です。

私も飲食業にいたので分かりますが、忙しいとどうしても「とりあえずやってみて」が増えがちです。

でも、安全に関することだけは、少し立ち止まって伝える価値があります。

3.やけどを防ぐための動線と作業方法を考える

熱い鍋や油を運ぶときに、人とぶつからない動線になっているか。フライヤー周辺に無理な動きがないか。

熱いものを持って後ろを振り返ったら、人がいた。

飲食店では、そんなヒヤッとする場面もあります。

声かけや作業動線、必要に応じた保護具など、普段の作業方法を見直しておきたいところです。

4.忙しさや人員配置にも目を向ける

事故が起きたとき、「本人が注意していれば防げた」で終わらせてしまうと、同じ事故が繰り返されるかもしれません。

人手が足りず急いでいた。休憩が取れないほど忙しかった。新人に作業を教える余裕がなかった。

事故の原因は、本人の行動だけとは限りません。

その背景にある「働き方」まで見ることで、初めて見えてくることもあります。

もし事故が起きたら、まずケガをした人を優先する

どれだけ予防していても、事故が起きてしまうことはあります。

そのときに大切なのは、手続きより先に、ケガをした人の安全と治療を優先することです。

私がやけどをしたときも、病院へ行って治療を受けました。

仕事中のケガは、つい「これくらいなら大丈夫かな」と思ってしまうこともあります。

私もそういうタイプでした。

でも、無理をして悪化させてしまっては元も子もありません。

労災に該当するかどうかをその場で決めることより、まず必要な対応をする。

この順番を大切にしたいと思っています。

事故が起きたときの基本的な流れ

  1. 安全を確保・応急処置
    作業を止め、ケガの状態を確認します。緊急性がある場合は、救急要請など必要な対応を行います。
  2. 必要に応じて医療機関を受診
    受診するときは、医療機関に「仕事中のケガです」と伝えます。
  3. 事故の状況を記録
    いつ、どこで、何をしていて、どのようにケガをしたのかを確認します。目撃者や現場の状況も確認しておきます。
  4. 必要な手続きを確認
    ケガの状況や休業の有無を確認し、必要な労災保険の手続きを進めます。あわせて、労働基準監督署への報告が必要か確認します。
  5. ケガをした本人をフォロー
    ケガの状態や、仕事に戻るうえでの不安などを確認します。必要に応じて仕事の内容や復帰方法を考えます。
  6. 原因を確認して再発防止
    床、設備、作業方法、忙しさ、人員配置など、店として改善できることがなかったか確認します。

現場で使える無料PDF

事故が起きたときに、「次、何をすればいいんだっけ?」とならないよう、対応フローと発生状況確認シートをまとめました。

無料PDF|飲食店で労災が起きたときの対応フロー

事故発生後の対応と、状況を整理するための確認シートをA4・全3ページにまとめています。

・事故発生後の対応フロー
・労働災害 発生状況確認シート
・A4/全3ページ

無料PDFをダウンロードする

※印刷して、そのまま店舗で使える簡易資料です。

労災保険の手続きで知っておきたいこと

ここから少しだけ制度の話をします。

全部を覚える必要はありません。

ただ、「仕事中のケガは、普段の病気やケガとは扱いが違う」ということは知っておきたいところです。

労災に該当するかは、会社が決めるわけではない

「本人の不注意だから労災ではない」

「会社に責任がないから労災にならない」

そう考えてしまうことがあります。

しかし、労災保険の支給・不支給を最終的に決めるのは会社ではありません。

労働者本人が労災保険給付を請求し、その請求に基づいて労働基準監督署長が支給・不支給を決定します。

つまり、会社側で「これは労災じゃない」と決めて終わりにはできません。

事故が起きたら、まず事実を確認して、必要な手続きを進めていくことが大切です。

仕事中や通勤途中のケガには健康保険を使わない

仕事中や通勤途中の事故によるケガは、原則として健康保険ではなく労災保険の対象となります。

これは「会社と本人のどちらを使うか選ぶ」というものではありません。

受診するときには、医療機関に「仕事中のケガです」と伝えましょう。

労災保険指定医療機関などでは、所定の手続きをすることで、原則として窓口で治療費を負担せずに必要な治療を受けることができます。

指定医療機関以外で受診した場合は、いったん治療費を支払い、あとから労災保険へ費用を請求する方法があります。

ただし、指定医療機関を探すために治療を遅らせる必要はありません。

緊急時は、何より治療を優先してください。

もし仕事中のケガで誤って健康保険を使ってしまった場合は、そのままにせず、受診した医療機関や加入している健康保険、労働基準監督署などへ確認しましょう。

仕事を休んだ場合の補償もある

仕事中のケガによる療養のため働けず、賃金を受けられない場合には、休業に関する補償があります。

労災保険の休業補償給付は、原則として休業4日目から支給されます。

業務災害の場合、最初の3日間については労災保険から休業補償給付は支給されず、使用者による休業補償が必要となる場合があります。

実際には、休業した日や賃金の支払い状況などを確認しながら手続きを進めます。

労働者死傷病報告と「労災隠し」

ここは少しややこしいところです。

事故が起きた場合、「労災保険の請求」とは別に、会社から労働基準監督署へ「労働者死傷病報告」の提出が必要になることがあります。

似ていますが、別の手続きです。

労働者死傷病報告とは

労働者死傷病報告は、労働災害などによって労働者が死亡または休業した場合に、事業者が所轄の労働基準監督署へ行う報告です。

死亡または休業4日以上の場合

遅滞なく報告します。

休業4日未満の場合

1〜3月、4〜6月、7〜9月、10〜12月の期間ごとにまとめ、それぞれの期間の最後の月の翌月末日までに報告します。

「1日しか休んでいないから何も報告しなくていい」とは限らないので、ここは注意したいところです。

なお、2025年1月1日から労働者死傷病報告は電子申請が原則義務化されています。

実際に提出するときは、厚生労働省の最新の様式や案内を確認しましょう。

「労災隠し」とは何か

厚生労働省では「労災隠し」を、

労災事故の発生を隠すため、労働者死傷病報告を故意に提出しないこと、または虚偽の内容を記載して提出すること

としています。

「大ごとにしたくない」

「会社に迷惑がかかるから」

そんな理由で事故をなかったことにはできません。

また、仕事中や通勤途中のケガについて、健康保険と労災保険を会社や本人が自由に選べるわけでもありません。

大切なのは、事故を隠すことではなく、起きたことをきちんと整理し、必要な治療や補償につなげることです。

私は、ここが一番大事だと思っています。

手続きが終わった後こそ、本人へのフォローを

事故後の対応は、病院へ行って、書類を提出したら終了。

……ではありません。

ケガをした本人がその後どう過ごしているか、仕事に戻ることに不安はないかを確認することも大切です。

例えば、手をやけどした調理スタッフなら、治療中にどのような作業ができるのか。

腰を痛めた方なら、重いものを運ぶ仕事をすぐに再開しても大丈夫なのか。

本人の状態や医師の指示なども確認しながら、無理のない復帰方法を考えていく必要があります。

「もう治った?いつから出られる?」

だけではなく、

「今、困っていることはない?」

「戻るときに不安なことはある?」

そんなふうに聞ける職場であってほしいと思います。

事故の原因を振り返り、同じケガを防ぐ

事故が起きた後は、原因を確認して再発防止につなげます。

ここで大切なのは、誰かを責めるためではありません。

同じようなケガをする人を増やさないためです。

例えば、濡れた床で転倒した場合。

「本人が気をつけていなかった」で終わらせず、なぜ床が濡れていたのか、すぐ清掃できる環境だったか、通路に問題はなかったか、忙しさで対応が後回しになっていなかったかを確認します。

やけどや切り傷でも同じです。

設備の配置、道具の管理、作業手順、教育、人員配置など、店として改善できることがないかを振り返ります。

会社には安全配慮義務もある

労働契約法第5条では、使用者は、労働者が生命や身体などの安全を確保しながら働けるよう、必要な配慮をするものとされています。

厚生労働省の解説では、この「安全」には心身の健康も含まれ、必要な配慮は職種や仕事内容、働く場所など具体的な状況によって変わるとされています。

また、労働安全衛生法などでは、事業者が労働災害を防止するために講じるべき具体的な措置も定められています。

ただし、事故が起きたからといって、必ず会社に安全配慮義務違反があったということではありません。

労災保険の対象になるかどうかと、会社に法的な責任があるかどうかは、分けて考える必要があります。

でも、その前に。

働く人が安全に働ける環境をつくる。

会社にとって、まず大切なのはここではないでしょうか。

まず、ケガをした人を大切にする

飲食店は、お客様においしい料理や心地よい時間を届ける仕事です。

でも、その料理やサービスをつくっているのは、そこで働いている人です。

事故を完全になくすことは難しくても、危険を減らす努力はできます。

そして、もしケガが起きてしまったら、必要な治療を受けられるようにする。必要な手続きをする。その後の仕事への復帰まで支える。

働く人を大切にすることは、事故が起きたときの対応にも表れる。

私はそう思っています。

忙しい飲食店だからこそ、忘れたくないことです。

お店の働き方を、少し整理してみませんか?

労災の予防は、床や設備だけの話ではありません。

日々の働き方、人員配置、休憩、教育、店内のコミュニケーション。

いろいろなものがつながっています。

「うちのお店はどうだろう?」

そう感じた方は、無料の簡易チェックもご活用ください。

飲食店の現場・働き方 簡易チェック

店舗の困りごとを整理するための無料フォームです。回答内容をもとに、個別レポートサービスのご案内が可能か確認します。

※このフォームは、労働関係法令への適合性を判定するものではありません。従業員の氏名・給与明細・健康情報などは入力しないでください。

飲食店の現場・働き方 簡易チェックはこちら

参考にした公的情報

この記事の制度や手続きに関する内容は、主に以下の公的情報をもとに整理しています。

  • 厚生労働省「労働災害が発生したとき」
  • 厚生労働省「労災保険に関するQ&A」
  • 厚生労働省「労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されました」
  • 厚生労働省「労災かくしとは何ですか」
  • 厚生労働省「労働契約法」
  • 全国健康保険協会「健康保険給付について」

実際の事故では、ケガの状況や休業日数などによって必要な手続きが異なります。個別のケースについては、所轄の労働基準監督署などへ確認してください。

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