飲食店の熱中症対策|厨房・ホールで働く従業員を守るために

労災・健康管理

こんにちは、nobuです。

飲食店の厨房には、コンロやフライヤーなど熱を発する設備が多くあり、ホールでも冷房が十分に効いていない場所や、屋外での接客など、暑い環境で働く場面がありますよね。

こうした環境で気をつけたいのが、熱中症です。

熱中症は屋外だけでなく、室内でも起こります。従業員の安全を守るためには、日頃の予防に加えて、体調に異変があったときの対応も考えておく必要があります。

今回は、飲食店で取り組みたい熱中症対策について、法律上のルールも交えながら紹介します。ぜひ、自分のお店や会社の状況と照らし合わせながら読んでみてください。

熱中症は厨房でもホールでも起こる

熱中症は、暑さによって体温の調節がうまくできなくなり、身体にさまざまな症状が現れる状態です。室内でも発生し、場合によっては命に関わることがあるのは、ニュースなどでもよく知られているのではないでしょうか。

飲食店では、例えば次のような場面が考えられます。

  • コンロやフライヤーの近くで調理を続けている
  • 空調が十分に効いていない場所で接客している
  • テラス席や店外で案内・片付けをしている
  • 忙しい時間帯に水分補給や休憩ができていない

厨房だけでなく、ホールや屋外での作業にも熱中症の危険が潜んでいます。従業員がどのような環境で働いているのかを把握し、必要な対策を考えておきたいところです。

私自身も、暑さに苦労しました

私が飲食店を経営していた頃、厨房はとても暑く、温度計が40℃を超えることもありました。特に鉄板の近くでは50℃近くに達することもあり、そんな環境で8時間近く動き回る毎日。ホールもエアコンの冷房能力が足りず、従業員と一緒に汗だくになりながら接客していたのを覚えています。

当時は、それが当たり前の日常で、暑さへの対策を積極的に考えていませんでした。従業員も同じ環境で働いていたのに、経営する立場としてもっとできることがあったはずです。

今振り返ると、反省しきりですが。

暑いのは仕方がないと考えるのではなく、どうすれば少しでも安全に働けるのか。この記事を読んでくださっている経営者や店長には、そこに目を向けてほしいと思っています。

熱中症対策には法律上の義務がある

2025年6月1日から、改正労働安全衛生規則が施行され、一定の暑い環境で行う作業について、熱中症の悪化を防ぐための対策が義務付けられました。

対象となるのは、次の両方の条件を満たすことが見込まれる作業です。

  • WBGT値(暑さ指数)が28℃以上、または気温が31℃以上
  • その環境で連続1時間以上、または1日4時間を超えて作業する

WBGT値とは、気温だけでなく、湿度や周囲の熱なども考慮した、熱中症の危険性を判断するための数値です。

例えば、厨房やホールでも、実際の暑さと作業時間がこの条件に当てはまれば、対策の対象となります。

対象となる作業がある場合、お店や会社は次の3つを行わなければなりません。

  1. 従業員が体調の異変を申し出たり、周囲の人が異変に気づいたりしたときに、すぐ報告できる連絡先や方法を決める。
  2. 熱中症が疑われた場合の作業中断、身体の冷却、医療機関への搬送などの対応手順を決める。
  3. 報告方法と対応手順を、関係する従業員に知らせる。

つまり、従業員が体調を崩してから対応を考えるのではなく、あらかじめ準備しておく必要があるということです。

なお、すべての厨房やホールが自動的に対象になるわけではありません。実際に働く場所の暑さや作業時間を確認して判断します。

飲食店で取り組みたい熱中症の予防対策

法律上の報告体制や対応手順に加えて、熱中症を起こさないための環境づくりも大切です。

厚生労働省は、2026年3月に「職場における熱中症防止のためのガイドライン」を新たに策定しました。職場の状況に応じて、暑さの管理や水分補給、健康状態の確認などに取り組むことが示されています。

働く場所の暑さを確認する

まずは、従業員が実際に働いている場所の暑さを確認してください。同じ店内でも、コンロの近くと客席では暑さが異なることがある為です。厨房だけでなく、ホールや屋外の作業場所にも目を向けましょう。外でお待ちのお客様の対応をしている従業員は、思っている以上に熱中症のリスクが高いためです。

環境省の熱中症予防情報サイトでは、地域ごとの暑さ指数を確認できますが、地域の数値がそのまま店内の暑さを表すわけではありません。厨房やホールについては、実際の作業場所の環境を確認する必要があります。

暑さが厳しい場所では、設備からの熱を遮る工夫や、空調・換気の見直しなど、作業環境そのものを改善できないか考えていきましょうね。

水分補給と休憩ができるようにする

厚生労働省は、のどが渇いていなくても、こまめに水分を補給するよう呼びかけています。飲食店では、ランチやディナーのピーク時に仕事が集中しがちですが、忙しいときこそ水分補給や休憩を後回しにしないこと。

例えば、従業員同士で交代しながら水分補給の時間を確保したり、涼しい場所で身体を休められるようにしたりするなど、無理なく続けられる工夫を。そして、汗を多くかく場合には、水分だけでなく塩分の補給も忘れないようにしたいところですね。

従業員の体調を確認する

熱中症を防ぐためには、働く場所の暑さだけでなく、従業員の体調にも目を向けたいところです。出勤時の体調確認に加え、勤務中も従業員同士で声をかけ合うなど、小さな異変を見逃さない工夫が欠かせません。

特に注意したいのは、暑さに慣れていない従業員や、体調が優れない人への対応。本人の様子を確認し、必要に応じて休ませることも大切です。

また、体調に異変を感じたとき、無理をせず申し出られる職場であることも重要になります。従業員が安心して声を上げられる環境を、日頃から整えておきたいものですね。

従業員に熱中症が疑われる症状が出たら?

熱中症では、次のような症状が現れることがあります。

  • めまい、立ちくらみ
  • 頭痛、吐き気、嘔吐
  • 身体のだるさ
  • 筋肉のこむら返り
  • 判断力や集中力の低下

こうした症状が見られたら、まずは仕事を中断させ、涼しい場所へ移動してもらう。衣服をゆるめて身体を冷やし、意識がはっきりしていて自分で安全に飲める場合は、水分や塩分を補給してもらいます。

ただし、呼びかけへの反応がおかしい場合や、自力で水分を飲めない場合は、ためらわず救急車を呼んでください。症状が改善しない場合も、医療機関での診察が必要です。熱中症が疑われる従業員を一人きりにせず、周囲の人が付き添うことも忘れてはいけません。少し休めば大丈夫と安易に判断せず、本人の状態を確認しながら対応しましょう。

仕事中に熱中症を発症した場合は、労災保険の対象となる可能性もあります。労災が起きた際のお店や会社の対応については、次の記事で紹介しているので、あわせて参考にしてみてください。

▶ 関連記事
仕事中にケガが起きたら?店・会社側の対応と労災保険の基本

従業員全員に伝わる熱中症対策を

熱中症対策は、ルールを作るだけでなく、従業員全員が理解できることも大切です。

例えば、外国人従業員には多言語の資料を活用したり、障害のある従業員には本人の特性に合わせて説明方法を工夫したりすることも考えられます。雇用している従業員の特性に応じて、理解しやすい対策をしていきましょう。

厚生労働省では、外国人や障害のある方向けの熱中症予防資料も公開しています。必要に応じて活用してみてください。

▶ 公的資料
厚生労働省|熱中症関連情報・啓発資料

大切なのは、従業員一人ひとりが熱中症の危険性を理解し、体調に異変があったときに行動できることです。

まとめ

熱中症は、厨房だけでなく、ホールや屋外で働く従業員にも起こる可能性があります。働く場所の暑さを確認し、水分補給や休憩ができる環境を整える。そして、体調に異変があったときには、すぐに仕事を中断して必要な対応ができるようにしておく。

こうした日頃の備えが、従業員の安全を守ることにつながります。

飲食店では、忙しい時間帯ほど目の前の仕事に意識が向きがちです。だからこそ、万が一の事態にも落ち着いて対応できるよう、日頃から備えておく必要があります。

従業員が安心して働ける環境をつくることも、店長や経営者の大切な役割ではないでしょうか。

まずは、自分のお店や会社でどのような熱中症対策ができているか、確認してみてください。

参考にした公的情報

この記事は、以下の法令・公的情報をもとに作成しています。

※法令・公的情報は2026年10月時点の内容を確認しています。

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