こんにちは、nobuです。
今回は、退職勧奨シリーズの第3弾です。これまでの記事では、退職勧奨の基本や、実際に従業員へ退職を勧める際の注意点を紹介してきました。
では、退職勧奨の進め方を誤まってしまうと、会社にはどのようなリスクがあるのか。実際に、退職を勧める際の対応が問題となり、会社に損害賠償が命じられた裁判があります。
今回は、2つの裁判例を取り上げ、会社のどのような対応が問題になったのか、飲食店の経営者や店長が同じ失敗をしないために何を学べるのかを考えてみましょう。
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【退職勧奨を考える #01】退職勧奨とは?解雇との違いと知っておきたい基本
事例① 退職を断ったのに、何度も面談を続けたら?
何があった?
ある会社で、従業員が退職勧奨を受けた事例です。
従業員は退職を拒否したものの、その後も上司との面談が繰り返されることになります。面談では、他の部署で受け入れることは難しいという趣旨の説明に加え、本人の能力や給与について否定的な発言もありました。
こうした会社側の対応を問題視した従業員は、退職勧奨などが違法だとして、慰謝料などを求めて裁判を起こしました。
裁判所はどう判断した?
裁判所は、従業員が一度退職を断ったからといって、その後の説得がすべて禁止されるわけではないとしています。
しかし、この事例では、退職を求める面談が執拗に繰り返されていたことに加え、根拠が乏しい説明や、本人の自尊心を傷つける発言があったことを問題としました。
その結果、退職勧奨について違法な行為があったと判断され、会社に20万円の賠償が命じられました。
この失敗から学べること
飲食店では、遅刻や勤務態度などの問題が続き、従業員に退職を勧める場面も考えられます。
しかし、本人が退職を拒否したからといって、何度も面談を繰り返したり、能力を否定するような言葉を使ったりしてよいわけではありません。
仕事上の問題があるなら、まずは具体的な事実を確認し、必要な注意や指導を行うことが大切です。退職してもらうことばかりに目を向けず、会社としてどのような対応が適切なのかを考えたいところです。
事例② 長時間の面談で退職を迫ったら?
何があった?
ある航空会社で、交通事故による長期間の休職から復職しようとしていた従業員が、退職を求められた事例です。
会社は約4か月の間に30数回もの面談を行い、中には約8時間に及ぶものもありました。面談中には、本人を侮辱するような発言に加え、大声を出したり、机をたたいたりする行為もあったとされています。
さらに、本人が断っているにもかかわらず寮を訪ねたり、家族に退職の説得を頼んだりするなど、面談以外でも退職を求める働きかけが続いていました。
裁判所はどう判断した?
裁判所は、面談の回数や長さ、従業員に対する発言や行動などを問題としました。そして、会社の対応は通常の退職勧奨として認められる範囲を超えており、違法な退職強要に当たると判断しています。控訴審では、退職強要による精神的な苦痛に対して、慰謝料80万円が認められました。
なお、この事件では従業員の解雇についても争われ、解雇は無効と判断されています。
この失敗から学べること
飲食店では、店長と従業員が日常的に顔を合わせる機会も多く、退職について話し合った後も同じ職場で働き続けることがあります。そのため、退職を拒否された後の対応には注意が必要です。例えば、何時間も面談を続けたり、強い言葉で退職を迫ったりすると、従業員に大きな心理的負担を与えかねません。
また、本人の意思に反して家族まで巻き込むような対応にも問題があります。
退職勧奨は、相手を説得し続ければよいというものではありません。本人が自由に判断できることを大切にする必要があります。
2つの裁判例から、店長・経営者が学べること
今回の裁判例では、いずれも退職勧奨の進め方が問題となり、会社に賠償が命じられました。
共通しているのは、退職を求める過程で、従業員の意思や気持ちを十分に尊重しない対応があったことです。
飲食店や会社で退職勧奨を検討するときには、次の点を意識したいところです。
- 退職を拒否された場合、その意思を軽く扱わない
- 面談の回数や時間、進め方に注意する
- 人格を否定するような発言をしない
- 退職するよう威圧したり、無理に結論を求めたりしない
ただし、面談が何回までなら問題ない、何分以内なら安全といった一律の基準があるわけではありません。面談の回数だけでなく、発言内容や本人の意思、会社側の対応なども重要になります。
まとめ
今回紹介した2つの裁判例では、退職勧奨の進め方が問題となり、会社に損害賠償が命じられました。
従業員に退職を勧めることには、会社側にもさまざまな事情があると思います。人手が限られる飲食店では、一人の従業員の問題が、ほかのスタッフや店舗運営に影響することもあるでしょう。
それでも、退職してもらうためなら、どのような対応をしてもよいわけではありません。
会社を守るためにも、相手の意思を尊重し、冷静に対応することが大切だと感じます。
実際に退職勧奨を行う際の準備や面談の進め方については、シリーズ第2弾の記事でも紹介しています。
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【退職勧奨を考える #02】退職勧奨をするときの注意点|面談から退職を断られた場合の対応まで
参考にした裁判例・公的情報
この記事は、以下の裁判例・公的情報をもとに作成しています。
- 日立製作所事件(横浜地方裁判所・令和2年3月24日判決)|労働新聞社
- 全日本空輸(退職強要)事件(大阪高等裁判所・平成13年3月14日判決)|厚生労働省掲載資料
- 全日本空輸(退職強要)事件|全国労働基準関係団体連合会
- 厚生労働省「退職勧奨とはどのようなものでしょうか」
※裁判例・公的情報は2026年10月時点で確認しています。


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