こんにちは、nobuです。
以前、労務の仕事をしていた職場で、会社が掲げる「従業員ファースト」という理念と、実際のマネジメントとの間に大きな隔たりを感じたことがあります。
言葉では従業員を大切にすると掲げていても、現場の声が十分に聞かれず、従業員に不利益が生じる可能性のある問題も残されていました。さらに、そうした問題を改善しようとすると、提案の内容よりも、発言した人の言い方や態度が細かく取り上げられることもありました。
この記事では、私が経験した出来事を振り返りながら、従業員ファーストを掲げる会社に必要なマネジメントについて考えてみたいと思います。
従業員に影響する労務上の問題が残っていた
私が入社した当初、労務管理にはいくつかの課題が残されていました。私が確認した範囲では、長い期間にわたって処理されていない労働保険の手続きがあり、給与計算の誤りも起きていました。
労務の仕事は、単に会社の手続きを進めるだけではありません。給与や社会保険、労働保険など、働く人の生活に直接関わる仕事です。
手続きが遅れれば、必要な給付を受ける時期に影響する可能性があります。給与計算の誤りは、従業員の毎月の暮らしに関わる問題です。
そのため私は、確認した問題について、手続きの見直しや改善を提案しました。会社を批判したかったのではなく、従業員への不利益を防ぎ、同じ問題を繰り返さない状態にしたいと考えていたからです。
改善を提案したあと、細かな指摘が増えた
改善を提案するようになってから、上司との関係や職場の空気に変化を感じるようになりました。
提案した内容について話し合うよりも、私の言い方や仕事の進め方について、細かな指摘を受ける場面が増えていったのです。仕事の品質を確認するというより、私の間違いを探されているように感じることもありました。
相手がどのような意図で対応していたのか、本当のところは分かりません。私の伝え方にも、もっと工夫できる部分はあったと思います。
それでも、改善を提案したあとに指摘や管理が増えたことで、私は次第に意見を出しにくくなりました。
問題の内容ではなく、提案した人の態度や言い方ばかりが取り上げられるようになると、組織の課題は解決しにくくなります。
意見の内容より、誰が言ったかが優先される
当時の職場では、同じような意見であっても、誰が発言したかによって受け止められ方が変わるように感じることがありました。
立場が上の人の意見は通りやすい一方で、現場の従業員が疑問や問題を伝えても、十分に聞いてもらえないことがあります。上司の反応を気にして発言を変えたり、問題に気づいていても黙っていたりする場面もありました。
こうした環境では、「何が正しいか」よりも、「誰が言ったか」が優先されやすくなります。
改善を提案したことで自分の立場が悪くなるなら、黙っていた方が安全だと考える人も増えていきます。しかし、現場から問題が上がらなくなったからといって、問題そのものがなくなったわけではありません。
見えなくなっただけです。
会社の理念と、マネジメント層の行動が一致していなかった
その会社は、「従業員ファースト」を理念の一つとして掲げていました。
しかし、私が実際に働く中で感じたのは、その理念と日々のマネジメントが一致していないということでした。
従業員の給与や労働保険に関わる問題が残っていても、十分に確認されない。一方で、現場から改善案を出すと、その内容よりも、提案した人の言い方や態度が細かく取り上げられる。
そのような状況では、従業員を守るための改善よりも、管理する側の都合や立場が優先されているように感じてしまいます。
マネジメント層がどのような意図で判断していたのか、私には分かりません。ただ、従業員ファーストを掲げるのであれば、判断する側の意図ではなく、実際に従業員がどのような影響を受けているかを見る必要があります。
理念は、会社案内やホームページに書かれた言葉ではなく、日々の判断や対応の中に表れるものだと思います。
従業員ファーストは、何でも受け入れることではない
従業員ファーストとは、従業員の希望を何でも受け入れることではありません。
会社には、経営を続けるための判断が必要です。従業員にも、会社のルールを守り、自分の仕事に責任を持つことが求められます。
そのうえで、私が考える従業員ファーストは、従業員の生活に関わる手続きを正しく行い、現場から出た意見を内容で判断し、問題があれば改善しようとする姿勢を持つことです。
従業員の意見をすべて採用する必要はありません。しかし、まず事実を確認し、その提案が会社や働く人にとって必要なものかを検討することはできます。
採用できない場合も、なぜ難しいのかを説明することはできます。
意見を出した従業員を問題のある人として扱うのではなく、会社に必要な情報を届けてくれた人として向き合う。その姿勢が、従業員からの信頼につながるのだと思います。
細かな管理が、現場の声を止めてしまう
労務の仕事には、確認やダブルチェックが欠かせません。
給与や社会保険の手続きは、間違いが従業員の生活に影響するため、正確性を高めるための確認は必要です。
ただし、確認の目的が仕事の品質を守ることではなく、特定の人の間違いを探すことになれば、働く人は萎縮していきます。
「また何か言われるかもしれない」と考えるようになると、分からないことがあっても質問できなくなります。失敗を恐れるあまり、必要な報告まで遅れることもあります。
改善案や新しい意見も出にくくなり、従業員は自分で考えるより、上司の顔色を見て動くようになります。
管理を強くすれば、表面的にはミスが減ったように見えるかもしれません。しかし、質問や報告が止まり、問題が隠れるようになれば、組織のリスクはむしろ見えにくくなります。
必要なのは、従業員を動けなくする管理ではなく、安心して確認や相談ができる仕組みです。
管理職個人だけを責めても、職場は変わらない
以前の私は、上司の対応に対して強い怒りや悔しさを感じていました。今でも、適切ではなかったと思う対応はあります。
ただ、時間がたった今は、管理職個人の性格だけで、問題のすべてを説明することはできないとも考えています。
管理職自身が、さらに上の立場から強いプレッシャーを受けていた可能性もあります。組織内の役割や判断基準が曖昧で、どのように部下を指導すればよいのか分からなかったのかもしれません。
また、管理職の行動に問題があっても、それを確認し、修正する仕組みが会社になければ、同じ問題は繰り返されます。
「あの上司が悪かった」で終わらせるのではなく、なぜそのようなマネジメントが行われ、組織として止められなかったのかを考える必要があります。
従業員を大切にする会社に必要なこと
従業員ファーストを実際の行動にするためには、会社として仕組みを整える必要があります。
まず必要なのは、現場の声を発言者の立場ではなく、内容で判断することです。伝え方に改善すべき部分があったとしても、指摘された問題そのものまで無視してよいわけではありません。
次に、指導の目的を明確にすることです。「仕事ができない」「意識が低い」といった抽象的な言葉ではなく、どの対応に問題があり、次からどうしてほしいのかを具体的に伝える必要があります。
そして、直属の上司以外にも相談できる仕組みをつくることです。上司と部下の二人だけで問題を抱え込ませず、人事・労務担当者や別の管理職などへ相談できる環境が必要です。
相談窓口があっても、相談したことで不利益を受けると感じる職場では利用されません。窓口を用意するだけでなく、安心して利用できる運用まで整えることが大切です。
声を上げた人を、問題のある人にしない
職場の問題を指摘する人は、ときに「面倒な人」「協調性がない人」と見られてしまうことがあります。
もちろん、伝え方によっては周囲との摩擦が生まれることもあります。私自身も、もっと落ち着いて伝えられた部分があったと思います。
それでも、伝え方に問題があったことと、指摘された内容が正しいかどうかは分けて考える必要があります。
発言した人だけを問題にし、内容を確認しなければ、組織に必要な情報が上がってこなくなります。
現場の従業員は、日々の仕事の中で問題を最初に発見する立場でもあります。その声を受け止めることは、従業員を守るだけでなく、会社のリスクを早い段階で発見することにもつながります。
声を上げた人が不利益を受けない職場は、問題を隠さず、改善できる職場だと思います。
この経験から私が学んだこと
私はこの経験を通して、正しいと思うことを伝えるだけではなく、伝え方やタイミングも大切だと学びました。
事実を整理し、従業員や会社にどのような影響があるのかを説明する。相手の立場も考えながら、改善できる方法を一緒に探す。
当時の私は、自分自身も余裕を失い、そこまで冷静に考えられなかった部分があります。
一方で、周囲との関係を壊さないために、問題をすべて見過ごせばよいわけでもありません。
自分の意見を伝えることと、相手を否定することは違います。
誰かを言い負かすためではなく、働く人と会社の双方を守るために、事実を伝え、改善につなげる。
今は、そのために労務の知識を使いたいと考えています。
最後に|理念は、日々の行動に表れる
従業員ファーストは、会社の理念として掲げるだけで実現するものではありません。
給与や社会保険の手続きを正しく行うこと。現場から出た意見を内容で判断すること。失敗した人を責めるだけで終わらせず、再発を防ぐ仕組みを考えること。
そうした日々の行動の中に、本当の意味での従業員ファーストが表れるのだと思います。
会社がどれほど立派な理念を掲げていても、実際のマネジメントが現場の声を無視し、従業員を萎縮させるものであれば、その理念は機能しているとは言えません。
反対に、特別な言葉を掲げていなくても、働く人の声を聞き、問題があれば誠実に向き合う会社は、従業員を大切にしていると感じられます。
私自身、当時の出来事に傷つき、前向きに考えられない時期もありました。それでも経験を振り返る中で、自分がこれからどのような姿勢で働きたいのかが、少しずつ見えてきました。
誰かの失敗を探す人ではなく、困っている人を支えられる人でありたい。
それが今の私が考える、本当の意味での「従業員ファースト」です。