うつ病を経験して気づいた環境の大切さ|史記のネズミの話から考える

心を磨く

こんにちは、nobuです。

うつ病を経験してから、自分の性格や能力だけではなく、身を置く環境について考えることが増えました。以前の私は、つらい状況でも「自分がもっと頑張れば何とかなる」と思いがちでした。

うまく働けないのも、周囲になじめないのも、自分の力が足りないからだと考えていたのです。そんなときに思い出したのが、『史記』の「李斯列伝」に登場する、便所のネズミと倉のネズミの話でした。

『史記』に登場する二匹のネズミ

『史記』の「李斯列伝」には、若い頃の李斯が、便所にいるネズミと食糧庫にいるネズミを見比べる場面があります。

便所にいるネズミは、汚れたものを食べ、人や犬が近づくたびにおびえていました。一方、食糧庫にいるネズミは、積み上げられた穀物を食べ、広い建物の中で、人や犬を恐れることなく過ごしていました。

その様子を見た李斯は、次のように嘆いたとされています。

人之賢不肖譬如鼠矣、在所自処耳

私はこの言葉を、「人の力がどのように見えるかは、身を置く場所によっても変わる」という意味として受け取りました。

もちろん、この逸話は現代の心の病気について書かれたものではありません。また、李斯がこの経験から考えたことには、身分や立場、出世への思いも含まれていたはずです。

それでも私は、この二匹のネズミの話から、環境が人に与える影響について考えさせられました。

うつ病を経験して、環境の影響を考えるようになった

うつ病になった頃の私は、自分を責めることばかり考えていました。

「どうしてみんなと同じように働けないんだろう」「以前はできていたのに、どうして今はできないんだろう」「自分が弱いから、こんな状態になったのではないか」

何かがうまくいかないたびに、原因を自分の中だけに探していました。

もちろん、うつ病になる理由は一つではありません。体質や生活状況、仕事、人間関係など、さまざまな要因が関係するものだと思います。

それでも私の場合は、当時の環境や人間関係、無理を続けていた働き方も、心と体への負担を大きくしていたのではないかと感じています。

自分が悪かったのではなく、今いる環境が、自分にとって安心して過ごせる場所ではなかったのかもしれない。

そう考えられるようになってから、少しだけ自分を責める気持ちが和らぎました。

同じ人でも、いる場所によって見え方が変わる

『史記』に登場する二匹のネズミは、どちらも同じネズミです。それでも、便所にいるか、食糧庫にいるかによって、食べるものも、周囲からの扱われ方も、安心して過ごせるかどうかも大きく違っていました。

人も、少し似ているのかもしれません。

ある職場では、自分の意見をまったく聞いてもらえなかった人が、別の職場では経験を評価されることがあります。人間関係の中で自信を失っていた人が、安心して話せる相手と出会うことで、少しずつ自分らしさを取り戻すこともあります。

同じ自分でも、環境が変われば、力の発揮しやすさや心の状態は変わります。今いる場所でうまくいかないからといって、自分に価値がないとは限りません。

その場所では、自分の良さを出しにくかっただけかもしれないのです。

自分を責める前に、今いる環境を見直してみる

心の調子を崩しているときは、どうしても自分の欠点ばかりが目につきます。もっと強くならなければいけない。もっと我慢しなければいけない。周囲に合わせられない自分が悪い。

私も、長い間そう考えていました。

けれど、自分を変えようと努力する前に、今いる環境が自分にどのような影響を与えているのかを考えることも大切です。

たとえば、次のような状態が続いていないでしょうか。

  • いつも強い緊張を感じながら働いている
  • 特定の人と関わるたびに体調が悪くなる
  • どれだけ頑張っても否定される
  • 失敗を過度に恐れ、安心して質問できない
  • 休んでいても仕事のことが頭から離れない
  • 自分の気持ちを話せる人がいない

こうした状態が続いているなら、「自分が弱いから」と決めつける前に、環境との相性を見直してみてもよいと思います。

環境がすべての原因だと断定することはできません。それでも、今いる場所が心と体に大きな負担を与えていないかを考えることは、自分を守るために必要です。

環境を変えることは、すぐに会社を辞めることではない

「環境を変える」と聞くと、すぐに転職や退職を考える方もいるかもしれません。しかし、体調が悪いときに、大きな決断を急ぐ必要はありません。

環境を変える方法は、会社を辞めることだけではないからです。

たとえば、仕事を一時的に休むことも、環境から距離を置く方法の一つです。上司や人事・労務担当者に相談し、業務量や働き方を見直してもらう方法もあります。

苦手な人との接点を減らしたり、連絡方法を変えたりするだけで、負担が少し軽くなることもあるでしょう。家庭や人間関係で疲れている場合も、安心して一人になれる時間をつくったり、信頼できる人や専門家に相談したりする方法があります。

  • 仕事を一定期間休む
  • 業務量や勤務時間について相談する
  • 人間関係から一時的に距離を置く
  • 連絡を確認する時間を決める
  • 主治医や家族に今の状態を話す
  • 体調が落ち着いてから転職や退職を考える

今の環境をすべて一度に変える必要はありません。まずは、自分の負担を少し減らすために、何ができるかを考えることから始めてもよいと思います。

安心できる場所は、人によって違う

『史記』の食糧庫のネズミのように、誰にとっても恵まれた一つの場所があるわけではありません。

ある人には働きやすい職場でも、別の人には負担が大きいことがあります。人と関わることで安心できる人もいれば、一人で過ごす時間が必要な人もいます。

忙しい環境で力を発揮できる人もいれば、落ち着いた環境の方が自分らしく働ける人もいるでしょう。

大切なのは、周囲から見て立派な場所を選ぶことではありません。自分が過度におびえず、安心して過ごせること。必要以上に自分を否定せず、持っている力を少しずつ発揮できることです。

私にとっての「倉」とは、そのような場所なのだと思います。

場所を変えても、すぐにすべてが解決するわけではない

環境を変えれば、すぐに心の状態が元どおりになるとは限りません。私自身、つらかった場所から離れたあとも、すぐに元気になれたわけではありませんでした。

離れたことで初めて、それまで抱えていた疲れや傷つきに気づくこともあります。安心できる環境に移ったあとも、不安や自己否定の気持ちが残る場合もあるでしょう。

だからこそ、環境を変えることだけでなく、休養や治療を続けながら、少しずつ心と体を整えていくことが大切です。

今いる環境がつらいと感じている場合も、一人だけで判断せず、主治医や信頼できる人に相談してみてください。環境から離れることと、治療を受けることは、どちらか一方を選ぶものではありません。

自分を守るために、必要な支えを組み合わせていくことが大切なのだと思います。

無理を続ける場所から、距離を置いてもいい

以前の私は、どれほどつらくても、その場所で頑張り続けることが正しいと思っていました。

逃げたと思われたくない。弱い人間だと思われたくない。ここで続けられなければ、どこへ行っても通用しない。

そんな思いがあり、環境から離れることを簡単には選べませんでした。

けれど今は、合わない環境で無理を重ね続けることだけが、正しい生き方ではないと思っています。自分の心や体を守るために、その場所から一時的に離れる。働き方を変える。関わる人や距離を見直す。

それは逃げではなく、自分がこれから生きていくための選択です。

『史記』の二匹のネズミは、身を置く場所によって、まったく異なる状況に置かれていました。人もまた、環境によって、自分の見え方や力の発揮しやすさが変わることがあります。

今いる場所で苦しんでいるからといって、自分そのものに価値がないわけではありません。

もしかすると、自分を責める前に、いる場所を見直す必要があるのかもしれません。

最後に

うつ病を経験したことで、私は「自分を変えること」だけでなく、「環境を見直すこと」の大切さを考えるようになりました。

もちろん、すぐに理想の環境を見つけられるわけではありません。生活や仕事の事情があり、簡単には離れられないこともあります。

それでも、今の環境が自分に合っているのかを考えることはできます。少し距離を置く。誰かに相談する。休む時間をつくる。今後の働き方をゆっくり考える。

小さな変化でも、自分を守る一歩になることがあります。

無理をして、いつも不安におびえる場所で頑張り続けなくてもいい。自分が少し安心できる場所を探してもいい。

『史記』の二匹のネズミの話は、そんなことを私に考えさせてくれました。

私自身も、焦らずに、自分に合った場所や生き方を少しずつ探していきたいと思います。

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