こんにちは、nobuです。
複数の店舗を運営している飲食店では、「今日、○○店の人が足りないから応援に行ってくれない?」「来週だけ別店舗で働いてほしい」といったこともありますよね。急な欠勤や繁忙期など、店舗同士で助け合う場面は珍しくありません。ただ、「同じ会社のお店だから、別店舗で働いてもらっても大丈夫」と簡単に考える前に、確認しておきたいことがあります。
それが、その従業員と「どこで働く」という約束をしているのかです。
今回は、飲食店で従業員に別店舗への応援をお願いするときに、法律上の基本的な考え方と、現場で確認しておきたいポイントを紹介します。
別店舗への応援勤務は違法?まず確認したい労働条件
最初に結論からお伝えすると、別店舗への応援勤務が一律に違法になるわけではありません。
ただし、人手が足りないからといって、会社が自由に別店舗での勤務を命じられるとは限りません。労働契約で勤務地が限定されている場合など、従業員の同意が必要になることもあります。
まず確認したいのが、その従業員と決めている労働条件です。特に見ておきたいのが、労働条件通知書に書かれている「就業場所」と「変更の範囲」です。
労働基準法第15条および労働基準法施行規則第5条では、労働契約を締結するときに、就業場所などの労働条件を明示することが定められています。
さらに2024年4月からは、労働契約の締結時と有期労働契約の更新時に、雇い入れ直後の就業場所だけでなく、将来の配置転換などで変わる可能性がある「就業場所の変更の範囲」についても明示が必要になりました。
別店舗への応援を考えるときは、まず従業員に対してどのような条件を伝え、合意していたのか確認してみましょう。
労働条件通知書については、こちらの記事で詳しく解説しています。
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飲食店の労働条件通知書|採用時に確認したいポイント
労働条件通知書の「就業場所」を確認
たとえば、A店でアルバイトを採用したとします。
労働条件通知書に、
雇入れ直後:A店
変更の範囲:会社が運営する○○市内の店舗
と書かれていれば、A店だけでなく、将来どの範囲で就業場所が変わる可能性があるのかが分かります。
一方で、
雇入れ直後:A店
変更の範囲:変更なし
となっていれば、前提が違ってきます。
厚生労働省は「変更の範囲」について、将来の配置転換などによって変わる可能性がある就業場所や仕事内容の範囲と説明しています。対象は正社員だけではなく、アルバイトやパート、有期契約の従業員なども含まれますので、注意してください。
厚生労働省が示している記載例でも、就業場所について「本社および全国の支社、営業所」「都内23区内の営業所」のように、変更する可能性のある範囲を示しています。
飲食店であれば、複数店舗で働いてもらう可能性があるのか、特定の地域内なのか、一つの店舗だけなのか。採用するときに「どこで働いてもらう可能性があるのか」を整理しておくことが大切です。
ただし、ここで注意したいことがあります。
労働条件通知書に「変更の範囲」を書いているからといって、それだけですべての別店舗勤務を自由に命じられる、という意味ではありません。
実際に別店舗での勤務を命じられるかどうかは、労働契約の内容や勤務地を限定する合意の有無、就業規則などを確認して判断する必要があります。また、配置転換を命じる権限がある場合でも、その命令が常に有効になるわけではありません。
反対に、勤務地を特定の店舗に限定する合意がある場合には、原則として、その合意に反する配置転換を本人の同意なく命じることはできません。
そのため、「労働条件通知書に書いてあるから大丈夫」と、それだけで判断しないようにしましょう。書類上の労働条件と実態をリンクさせる。他の記事でもお伝えしていますが、こうした確認を重ねることが、適切な労務管理につながります。
別店舗への応援をお願いするときに確認したいこと
労働条件を確認したら、実際に応援をお願いするときのことも考えてみましょう。
たとえば、普段は自宅から10分で通える店舗でも、応援先までは1時間かかるかもしれません。店舗によって営業時間や仕事内容、仕事の進め方が違うこともあります。
応援をお願いするときは、次のようなことを事前に伝えておくと分かりやすいでしょう。
- どの店舗で働くのか
- いつ応援に行くのか
- 何時から何時まで働くのか
- どんな仕事をするのか
- 交通費をどうするのか
- 応援先では誰から仕事の指示を受けるのか
また、A店で勤務したあとにB店へ移動し、そのまま仕事をする場合などは、店舗間の移動時間が労働時間になるかという別の問題も出てきます。
別店舗への応援という一つの出来事でも、就業場所だけではなく、労働時間や賃金などにも関係する可能性があります。ただし、今回は就業場所を中心に考えたいので、移動時間の詳しい話は別の機会に取り上げますね。
「契約書に書いてあるから」で終わらせない
私も飲食店で働き、店を運営するなかで、従業員同士で助け合う場面をたくさん経験してきました。飲食店では、急に人が休んだり、予想以上に忙しくなったりすることがあります。そんなとき、別店舗から応援に来てもらえることは、お店にとって本当に助かります。
一方で、応援に行く従業員からすると、いつもの店舗とは環境が違います。知らない従業員ばかりかもしれませんし、仕事の進め方が違ったり、通勤時間が長くなったりすることもあります。だからこそ、仮に別店舗で働く可能性を労働条件通知書に書いていたとしても、「書いてあるから行って」で終わらせないことが大切だと思っています。
「来週○○店の人が足りないんだけど、応援をお願いできる?」
「急な欠勤で人手不足の店舗を助けに行ってくれると助かります」
そんな一言があるだけでも、受け取る側の感じ方は変わるのではないでしょうか。労働条件をきちんと整えること。そして、実際に働いてもらうときには、従業員ときちんと話をすること。
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書類の整備とコミュニケーションの両方を大切にすることが、従業員が安心して働ける店づくりにつながります。
複数店舗を運営していて普段から応援勤務があるなら、人手が足りなくなってから考えるのではなく、採用するときから「どこで働いてもらう可能性があるのか」を整理しておきましょう。まずは、今使っている労働条件通知書の「就業場所」と「変更の範囲」を確認してみてください。
参考にした公的情報
この記事は、以下の法令・公的情報をもとに作成しています。
- 労働基準法 第15条(労働条件の明示)
- 労働基準法施行規則 第5条(労働条件の明示事項)
- 労働契約法 第3条(労働契約の原則)
- 厚生労働省|2024年4月からの労働条件明示ルールの改正
- 厚生労働省|労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)
※法令・公的情報は2026年10月時点の内容を確認しています。



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