こんにちは、nobuです。
「時給は1,200円、シフトは相談して決めよう」。採用時の条件を、こうして口頭だけで伝えていませんか?あとから「聞いていた話と違う」とならないために、大切なのが労働条件通知書です。今回は、渡すタイミングや書く内容など、飲食店の採用で押さえておきたい基本を紹介します。
労働条件通知書とは?アルバイトにも必要?
労働条件通知書とは、給料や勤務時間、仕事内容など、働く条件を従業員に伝えるための書類です。労働基準法第15条では、従業員を雇う際に、会社が労働条件を明示することを義務づけていて、正社員だけのルールではなく、アルバイトやパートを採用する場合にも、労働条件の明示が必要です。
たとえば、面接で「週3日くらい働いてほしい」と話していても、実際には週5日の勤務を求めることになれば、従業員は戸惑ってしまいますし、店や会社に不信感を抱きかねません。時給や勤務時間、休日などを採用時に明確にしておけば、お店と従業員の認識の違いも防ぎやすくなりますので、きっちり労働条件を明示しましょう。
労働条件通知書はいつ渡す?
労働条件は、従業員と労働契約を結ぶときに明示する必要があります。採用が決まり、働く条件について契約を結ぶ段階で、必要な内容を伝えるということです。飲食店では、採用を決めてから初出勤までの期間が短いこともありますよね。なので初出勤の直前になって慌てないよう、採用時に労働条件通知書を準備する流れを決めておくと安心です。
なお、法律で書面などによる明示が必要とされる事項については、口頭で説明するだけでは足りません。必要な内容を記載した書類を渡すなど、定められた方法で明示しましょう。
労働条件通知書には何を書く?
労働条件通知書には、従業員がどのような条件で働くのかを記載します。細かなルールはありますが、まずは次のような項目をイメージすると分かりやすいと思います。
- 契約期間はいつからいつまでか
- 契約期間が決まっている場合、更新の有無・判断基準や更新上限はどうなっているか
- どこで働くのか、就業場所の変更範囲はどこまでか
- どんな仕事をするのか、仕事内容の変更範囲はどこまでか
- 何時から何時まで働くのか
- 休憩時間はどれくらいか
- 休日や休暇はどうなるのか
- 残業があるか
- 賃金をどのように決め、計算し、支払うのか
- 給料の締日と支払日はいつか
- 退職するときのルールや解雇の事由はどうなっているか
たとえば、アルバイトを採用する場合なら、「時給1,200円」「勤務時間は17時から22時」「仕事内容は接客やレジ業務」といった内容です。従業員が働き始める前に、自分の労働条件を確認できるようにしておきます。
ただし、上の一覧だけで法律上必要な項目がすべてそろうとは限りません。雇用形態やお店の定め、無期転換申込権の有無などによって、追加で明示する事項もあります。実際に作成するときは、厚生労働省のモデル様式を確認しましょう。
就業規則がない小さなお店でも必要?
「うちは小さいお店だから、就業規則を作っていない」という経営者もいると思います。法律上、常時10人以上の従業員を使用する事業場では、就業規則を作成し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。常時10人未満の事業場では、法律上の就業規則の作成・届出義務はありません。ただし、就業規則を作る義務がない規模のお店でも、従業員を雇う際の労働条件の明示は必要です。
「小さい店だから、口頭で伝えれば十分」というわけではないんですね。お店の規模に関係なく、時給や勤務時間、休日、仕事内容などを明確にしておくことが大切です。就業規則がある場合は、一人ひとりに伝える労働条件と、お店全体のルールとの整合も確認しておきましょう。
「就業規則を作る人数は、どう数えるの?」「複数の店舗がある場合は?」といった疑問や、作成後の基本的な手続きについては、こちらの記事で整理しています。
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労働条件通知書と雇用契約書の違いは?
労働条件通知書と似た書類に、雇用契約書があります。この2つは名前が似ていますが、役割が少し違います。
- 労働条件通知書:会社が従業員に労働条件を明示する書類
- 雇用契約書:会社と従業員が、労働条件について合意したことを確認する書類
実務では、「労働条件通知書 兼 雇用契約書」として、一つの書類にまとめる方法もあります。法律上必要な明示事項を記載したうえで、双方が内容を確認し、合意した記録を残す形です。
たとえば、お店が「この条件で働いてもらいます」と伝え、従業員が「この条件で働きます」と確認できれば、あとから内容を振り返りやすくなります。アルバイトを採用する機会が多いお店では、こうした書類の準備から確認までの流れを決めておくと、採用時の対応も統一しやすいと思います。
労働条件通知書はLINEやメールで送ってもいい?
労働条件通知書は、必ず紙で渡さなければならないのでしょうか。実は、一定の条件を満たせば、メールやLINEなどを使って労働条件を明示することもできます。
ただし、従業員本人が電子的な方法を希望していることや、受け取った内容を書面として出力できることなど、守らなければならない条件があります。そのため、「LINEで時給を送ったから大丈夫」という意味ではありません。
電子的に渡す場合も、必要な項目を記載した労働条件通知書を作成し、あとから確認できる形で送ることが大切です。PDFなどで送付し、お店側でも交付した内容や記録を保存しておくと、後日の確認にも役立ちます。
古い労働条件通知書を使っていませんか?
労働条件の明示に関するルールは、法改正によって変わっています。以前作った書類をそのまま使い続けている場合は、現在のルールに合っているか確認しておきましょう。
2024年4月から追加された明示事項
2024年4月1日から、すべての従業員について、労働契約の締結時と有期労働契約の更新時に、雇い入れ直後の就業場所・仕事内容に加え、それぞれの「変更の範囲」も明示する必要があります。
たとえば、採用時はA店で働く予定でも、契約期間中にB店への異動を想定している場合は、その範囲が分かるように記載します。飲食店や飲食企業で複数の店舗を運営している場合には、特に気をつけたいところです。
また、有期労働契約の締結時と更新時には、更新上限の有無と内容も明示する必要があります。上限を設ける場合は、通算契約期間や更新回数の上限を示します。最初の契約を結んだ後に更新上限を新設したり、短縮したりする場合には、あらかじめその理由を説明する必要もあります。
さらに、無期転換申込権が発生する更新時には、無期転換を申し込めることと、無期転換後の労働条件の明示が必要です。申込権が発生した後も有期契約を更新し、その契約期間中に申込みができる場合は、更新の都度、明示します。
2026年10月からの変更も確認しよう
パート・有期雇用労働者には、労働基準法に基づく明示事項に加え、次の事項を、書面の交付などにより明示する必要があります。
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- 相談窓口
2026年10月1日からは、これらに加えて、通常の労働者との待遇の違いの内容や理由などについて、会社に説明を求めることができる旨の明示も必要になりました。新しく雇い入れるときだけでなく、労働契約の更新時も対象です。
これは、すべての待遇の違いを労働条件通知書に詳しく書かなければならない、という意味ではありません。従業員が待遇の違いについて説明を求められることを、きちんと伝えるためのルールです。
なお、本人から説明を求められた場合は、会社は待遇の違いの内容や理由などを説明する必要があります。この説明を求められる権利自体が、2026年10月に初めてできたわけではありません。今回追加されたのは、その権利があることを明示する義務です。
飲食店ではアルバイトやパートを採用することも多いと思います。古い様式をコピーして使っている場合は、最新の明示事項が反映されているか、一度確認してみてください。
厚生労働省|同一労働同一賃金特集ページ(2026年10月施行の改正案内)
厚生労働省のモデル労働条件通知書を使ってみよう
「必要な項目は分かったけど、実際にどんな書類を作ればいいの?」と思う方もいるかもしれません。そんなときは、一から作る必要はありません。
厚生労働省では、モデル労働条件通知書を公開しています。一般の従業員向けや短時間労働者向けなどの様式があるので、自分のお店で採用する従業員に合ったものを確認してみましょう。
まずは現在使っている書類と見比べて、必要な項目が入っているか、古い様式のままになっていないか、実際の働き方と内容が合っているかを確認することから始めてみてください。
書類と実際の働き方を一致させよう
実は、私が飲食店を運営していた頃は、労働条件通知書の存在を知りませんでした。アルバイトを採用するときも、時給やシフトなどを口頭で伝えることが中心で、書類を交付していなかったんです。
当時はそれが問題だと気づいていませんでしたが、今、労務の仕事に携わるようになって、人を雇うときに必要なルールを知らなかったことを深く反省しています。働く条件をきちんと伝えることは、法律を守るためだけでなく、お店と従業員が安心して仕事を始めるためにも大切なことです。
そして、もう一つ大事なのが、書類に書いた内容と実際の働き方を一致させることです。
たとえば、労働条件通知書には「休憩60分」と書いてあるのに、忙しくて実際には休憩を取れていない。これでは、書類を整えていても、働く環境が整っているとはいえません。
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休憩時間のルールは知ってる?|休憩の基本的な考え方
私が大切だと思うのは、次の3つがつながっていることです。
- 就業規則など、お店や会社のルール
- 労働条件通知書・雇用契約書に書かれた内容
- 従業員の実際の働き方
「休憩60分」と書いたのであれば、実際に60分休めるようにする。決められた勤務時間だけでなく、開店準備や閉店作業など、実際に働いた時間もきちんと把握する。こうした日々の管理があってこそ、労働条件通知書が意味のあるものになると思います。
人を採用するときに、働く条件をきちんと伝える。そして、その条件を守れるようにお店の働き方を整えていく。その積み重ねが、従業員の安心にも、お店や会社への信頼にもつながっていくのではないでしょうか。
労働条件通知書をチェックリストで確認しよう
「今使っている労働条件通知書、大丈夫かな?」という方に向けて、飲食店の労働条件通知書 簡易チェックリストを作りました。
基本的な確認項目に加えて、次の内容もA4・1枚にまとめています。
- 契約期間が決まっている従業員の確認
- 就業規則との関係
- 書類と実際の働き方が合っているか
- 2026年10月からの変更
難しい内容をすべて理解してから使う必要はありません。まずは今使っている労働条件通知書を手元に置いて、確認してみてください。



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