飲食店の着替え・開店準備・閉店作業は労働時間?店長が知っておきたい基本的な考え方

給与・労働時間

こんにちは、nobuです。

飲食店では、営業時間の前後にもさまざまな仕事があります。キッチンでは仕込みをする。ホールでは店内を清掃し、看板を出して、レジや予約を確認する。営業が終わった後にも、洗い物や清掃、レジ締め、翌日の仕込み、ゴミ出しなどが残っていることが本当にたくさんあります。

では、こうした時間はきちんと労働時間として管理できているでしょうか。

結論からいうと、開店前や閉店後であっても、店側の指示によって行っている仕事は労働時間に当たります。営業時間だけを基準に、従業員の労働時間を決めることはできません。

例えば、「開店は11時だから11時から勤務」「閉店は22時だから22時まで勤務」としていても、その前後に仕込みや片付けをしているのであれば、実際に働いた時間を確認する必要があります。

労働時間を適切に管理することは、従業員が安心して働くことにもつながります。

今回は、飲食店で迷いやすい着替え、開店準備、閉店後の作業、自主練習などが、どのような場合に労働時間になるのか。そして、実際にお店ではどう管理すればよいのかを紹介します。

そもそも「労働時間」とは?

労働基準法第32条では、原則として1週間40時間、1日8時間を超えて働かせてはいけないと定められています。

では、その「労働時間」をどこからどこまでと考えるのでしょうか。

厚生労働省のガイドラインでは、労働時間とは、従業員が会社や店の「指揮命令下」に置かれている時間とされています。

少し難しく聞こえますが、店や会社の指示のもとで仕事をしている時間のことです。シフト表やタイムカードに何時と書いてあるかだけで、労働時間が決まるわけではありません。

また、はっきりと「やってください」と言われていなくても、店側が仕事をするよう暗黙のうちに求めている場合など、実際の状況によっては労働時間に当たることがあります。

「タイムカードを押していない=労働時間ではない」ではありません。

大切なのは、打刻の有無だけで判断せず、実際にどのような働き方をしているのか確認することです。

開店前の仕込みや清掃も労働時間になる?

飲食店では、開店した瞬間から仕事を始められるわけではありません。私が店を運営していたときも、開店前にはキッチンとホールでそれぞれ準備をしていました。

キッチンなら仕込み。ホールなら店内の清掃、看板を出す、レジの準備、予約の確認などです。

こうした作業を店側の指示で行うのであれば、開店前であっても労働時間として扱う必要があります。厚生労働省のガイドラインでも、仕事に必要な準備を店側の指示で行っている時間は、労働時間に当たる例として挙げられています。

例えば11時開店のお店で、10時30分から仕込みや清掃をする必要があるのであれば、「営業時間は11時からだから」という理由だけで10時30分から11時までを労働時間から外すことはできません。

営業時間と労働時間は、同じではありません。

当たり前に感じる方もいるかもしれませんが、もし営業時間だけを基準に勤怠を管理しているのであれば、一度、実際の働き方を確認してみてください。

「始業時間には仕事を始められるように」はどう考える?

私自身は従業員に、「始業時間になったら仕事を始められるようにしてね」と伝えていました。

ただし、仕事を始めるために必要な準備まで、当然に従業員の自由な時間になるわけではありません。店側から決められた準備を始業前に行う必要があり、実際には仕事として求めているのであれば、その時間が労働時間に当たる場合があります。

例えば「9時始業だから、8時50分までに来て清掃やレジの準備を終わらせておいて」というのであれば、その10分間をどう扱っているのか確認する必要があります。

始業時刻だけではなく、実際に仕事のための行動をいつから求めているのかを見てください。

制服への着替えは労働時間になる?

着替えについては、一律に「なる」「ならない」と決められるものではありません。

厚生労働省のガイドラインでは、店側の指示によって、仕事に必要な決められた服装への着替えを職場で行った時間などが、労働時間に当たる例として挙げられています。

最高裁判例でも、会社から着るように決められた作業服や保護具などを、職場の決められた場所で着たり脱いだりする時間について、一定の条件のもとで労働時間に当たると判断されています。

そのため、「着替えだから労働時間ではない」「数分だから労働時間ではない」と、時間の短さだけで判断するのは適切ではありません。

私が運営していた店では、制服はTシャツ程度で、着替えてからタイムカードを押す運用にしていました。

ただ、労務の視点から考えると、店内での着替えが義務づけられているのか、どこで着替えることになっているのかなど、実際の運用を確認して判断する必要があります。

もし着替えが労働時間に当たるのであれば、打刻前に行っていたとしても、その時間を労働時間として把握しなければなりません。

閉店後の洗い物やレジ締めも労働時間になる?

開店前と同じように、閉店後にも仕事は残ります。私の店でも、営業が終わった後には清掃、洗い物、レジ締め、翌日の仕込み、ゴミ出しなどがありました。

お客様が帰って営業が終了したからといって、そこで従業員の仕事も終了するとは限りません。

厚生労働省のガイドラインでも、店側の指示によって行う、仕事が終わった後の清掃などの片付けは、労働時間に当たる例として挙げられています。

例えば22時閉店のお店で、22時30分まで洗い物や清掃、レジ締めをしているのであれば、その時間を「閉店後だから」という理由だけで労働時間から外すことはできません。

開店前から閉店後まで、実際に従業員がどのように働いているのかを見る必要があります。

「5分くらいだから」は切り捨てていい?

閉店後に「あと5分だけ片付けて」「ゴミだけ出して帰って」といった場面もあるかもしれません。しかし、短い時間だからといって、実際に働いた時間を日々切り捨ててよいわけではありません。

厚生労働省は、1日の労働時間について、原則として1分単位で計算することを示しています。一定時間に満たない労働時間を毎日切り捨て、その分の賃金を支払わない運用は認められません。

一方、1か月間の時間外労働・休日労働・深夜労働について、それぞれの時間数を合計した結果、1時間未満の端数が出た場合には、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げるという一定の処理が認められています。

これは、毎日の労働時間を自由に切り捨ててよいという意味ではありません。

つまり、毎日「15分未満は切り捨て」「30分未満なら残業にならない」といった運用はできないということです。

少し難しい話になってしまいましたが、数分だから大丈夫ではなく、働いた時間をきちんと把握して記録する。まずは、この基本を押さえておきましょう。

開店前・閉店後の「自主練」は労働時間?

飲食店では、開店前や閉店後にいろいろな練習をすることはありませんか?料理人が包丁の練習をする、新人が盛り付けを練習する、接客のロールプレイングをするといったケースです。

本人が本当に自分の意思で自由に行っている練習であれば、必ずしも労働時間に当たるとは限りません。ただし、「自主練」という名前をつければ労働時間ではなくなるわけでもありません。

厚生労働省は、参加することが仕事上必要とされている研修や教育、店側の指示によって仕事に必要なことを学んでいる時間については、労働時間に当たるとしています。

例えば、「営業後に練習しておいて」と店長から言われている、参加しないと仕事を任せてもらえないなど実際には参加せざるを得ない、店側が必要な技術を身につけるために練習を求めている。こうした場合は、「自主練だから」で終わらせず、実際の状況を確認してください。

反対に、参加するかどうかを本人が本当に自由に決められるのであれば、労働時間に当たらない場合もあります。

大切なのは、「自主練」という名前ではなく、その実態を見ることです。

特に「みんなやってきたから」「料理人なら練習するのが普通」といった職場の雰囲気や慣例によって、本人が断りにくくなっていないかも注意したいところです。

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飲食店では、労働時間をどう管理すればいい?

ここまで法律の考え方を説明してきましたが、店長や経営者からすると「結局、どうすればいいの?」というところが一番大切だと思います。

私は、まず次のようなことを確認し、店のルールとして整えていくとよいと考えています。

  • 仕事を始める前に打刻する
    仕込み、清掃、レジ準備など、店側が必要としている仕事を始める前に打刻します。着替えが労働時間に当たる場合は、その時間も含めて記録できるようにします。
  • 閉店後の仕事がすべて終わってから打刻する
    洗い物、清掃、レジ締め、翌日の仕込み、ゴミ出しなどが残っているのであれば、それらを終えてから退勤の打刻をします。業務終了後の着替えが労働時間に当たる場合も、記録から漏れないようにします。
  • 打刻後に仕事をさせない
    私自身もここは徹底していました。「ゴミだけ出して」「これだけ片付けて」という数分の仕事でも同じです。もし打刻後に仕事が発生した場合は、その時間も正しく記録します。
  • 打刻時間と実際の働き方にズレがないか確認する
    毎日10時に打刻しているのに、9時45分には仕込みを始めている。22時に打刻した後も、いつも片付けをしている。こうした状態がないか、店長側でも確認します。
  • 着替えや自主練は、一律に決めつけない
    着替えなら店側がどこまで求めているのか、自主練なら本当に本人が自由に選んでいるのか。名前だけで判断せず、実際の運用を確認します。
  • 「数分だからいい」をつくらない
    数分程度の仕事を毎日切り捨てる運用はしません。働いた時間はきちんと記録します。

このあたりを店のルールとして統一しておけば、従業員にとっても分かりやすくなります。

例えば、「仕事を始める前に打刻する」「仕事をすべて終えてから退勤を打刻する」「退勤を打刻した後は仕事をしない」といった基本ルールを、店長だけでなく従業員にも共有しておく。ただし、着替えなども含め、労働時間に当たる行為が記録から漏れないようにすることが前提です。

また、厚生労働省のガイドラインでは、始業・終業時刻を確認する方法として、使用者による現認やタイムカードなどの客観的な記録を基本としています。

ルールを作ったら終わりではありません。実際の勤務状況とタイムカードにズレがないか、店側が確認し、必要に応じて記録を修正することも大切です。

記事の内容をチェックリストで確認してみましょう

開店前・閉店後の作業や着替え、自主練など、ここまで紹介した労働時間の基本を簡単に振り返れるチェックリストです。

労働時間チェックリストを見る →

労働時間をきちんと管理することは、従業員を守ること

飲食店では、開店前にも閉店後にもたくさんの仕事があります。仕込み、清掃、レジ準備、予約確認、洗い物、レジ締め、翌日の仕込み、ゴミ出し。場合によっては、着替えや自主練習も労働時間に関係してきます。

一つひとつは数分かもしれません。ただ、「これくらいならいいだろう」が積み重なると、実際に働いている時間と記録されている時間にズレが生まれてしまいます。

店側が実際の労働時間をきちんと把握し、働いた時間に対して適切に賃金を支払う。これは法律を守るためだけの話ではないと、私は思っています。

労働時間の適切な管理は、従業員が安心して働ける環境づくりにもつながります。

働いた時間を曖昧にしない。数分の仕事だからと軽く考えない。店側から、ルールを守る姿勢を示す。

ヒトを大事にする店づくりは、小さな積み重ねが大事。

大変ですが、コツコツ行きましょう!

参考にした公的情報

この記事は、以下の法令・公的情報をもとに作成しています。

※法令・公的情報は2026年10月時点の内容を確認しています。

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