こんにちは、nobuです。
最低賃金が上がるたびに、「また人件費が上がるのか……」と頭を抱える飲食店の経営者や店長もいると思います。食材費や光熱費なども上がるなか、人件費の上昇は、店や会社にとって決して小さな負担ではない!ですよね?
ただ、最低賃金は「できれば守った方がいい金額」ではありません。従業員を雇う以上、守らなければならない最低限のルールということを覚えておいてください。
そして私は、法律を守ることだけが目的ではないと思っています。働いてくれる人が安心して働ける環境をつくることは、従業員を守るだけではなく、結果として店や会社を守ることにもつながります。
今回は、飲食店で働くアルバイト・パートなどの時給制から、少し分かりにくい月給制まで、最低賃金の確認方法をできるだけ簡単にお伝えします。
最低賃金とは?
最低賃金とは、会社やお店が従業員に支払わなければならない賃金の最低額の事で、最低賃金法第4条では、最低賃金が適用される従業員に対して、最低賃金額以上の賃金を支払うことが会社側に求められています。
たとえ本人と最低賃金より低い金額で合意していたとしても、その部分は無効となり、最低賃金額と同じ金額を支払う約束をしたものとして扱われます。
最低賃金には、都道府県ごとに決められている「地域別最低賃金」があります。そのため、「去年確認したから大丈夫」ではなく、毎年、最新の最低賃金額と、いつから新しい金額になるのかを確認することが大切です。
アルバイト・パートにも最低賃金は適用される
飲食店では、学生アルバイトやパートとして働く高齢者など、さまざまな働き方の人がいます。
地域別最低賃金は正社員だけに適用されるものではなく、アルバイトやパートなど、雇用形態や呼び方にかかわらず、原則としてその地域で働くすべての従業員に適用されます。そのため、「高校生だから」「学生アルバイトだから」「試用期間だから」という理由だけで、最低賃金より低い時給にすることはできないので、しっかりと覚えておいてください。
※一定の場合には、都道府県労働局長の許可を受けて最低賃金を減額できる特例がありますが、今回は割愛します。
最低賃金の確認方法は、時給制と月給制で違う
最低賃金を確認するときは、まず給与が「時給」なのか「月給」なのかを確認します。
時給制なら、時給をそのまま最低賃金と比べ、月給制なら、月給を1時間あたりの金額に直してから最低賃金と比べます。まずはこの違いを覚えておけば大丈夫です。
よかったら、下記の図で合わせて確認してみてください。

時給制の従業員の確認方法
アルバイトやパートなど、時給で給与を決めている場合はシンプルです。
時給 ≧ 最低賃金になっているかを確認するだけ。
たとえば、最低賃金が1,150円だったとします。時給1,200円なら最低賃金以上ですが、時給1,100円なら最低賃金を下回っています。
まずは、自分のお店で働くアルバイトやパートの時給と、現在適用されている最低賃金を見比べてみてください。
月給制の従業員の確認方法
少し分かりにくいのが、正社員などの月給制です。
「月給20万円払っているから大丈夫」とは限りません。月給制の場合は、月給を1時間あたりの金額に直してから最低賃金と比べます。
基本の計算式は次のとおりです。
最低賃金の確認に使う月給 ÷ 1か月平均所定労働時間 = 1時間あたりの金額
そして、この1時間あたりの金額が最低賃金以上になっているかを確認します。
「1か月平均所定労働時間」って何?
ここが一番分かりにくいところかもしれませんが、「1か月平均所定労働時間」とは、簡単に言えば、会社のルール上、1か月あたり平均して何時間働くことになっているかという時間です。
ここで、大切なのは、実際に働いた時間ではないということです。たとえば、「今月は忙しくて残業も含めて190時間働いたから190時間で割る」という計算ではありません。会社の年間カレンダーや就業規則などを見て、あらかじめ働くことになっている時間を確認します。
1か月平均所定労働時間を計算してみよう
たとえば、年間の勤務日数が240日で、1日の労働時間が8時間だったとします。
まず、1年間に働くことになっている時間を計算します。
240日 × 8時間 = 1,920時間
次に、12か月で割ります。
1,920時間 ÷ 12か月 = 160時間
この場合、1か月平均所定労働時間は160時間です。
つまり、基本的には1年間に働くことになっている時間 ÷ 12で考えます。
※日によって勤務時間が違う場合などは、単純に「勤務日数×8時間」とせず、会社で決められている年間の労働時間を確認して計算します。
月給を1時間あたりに直してみよう
では、実際に計算してみます。
月給が200,000円、1か月平均所定労働時間が160時間だった場合、
200,000円 ÷ 160時間 = 1,250円
となります。
この従業員の最低賃金を確認するための1時間あたりの金額は1,250円です。あとは、この1,250円と、その地域で適用されている最低賃金を比べます。
ただし、月給制ではもう一つ注意点があります。
給与の「総支給額」をそのまま使わない
たとえば、給与が次のようになっていたとします。
基本給 190,000円
通勤手当 10,000円
残業代 30,000円
総支給額は230,000円です。
では、230,000円をそのまま160時間で割ればいいのでしょうか。
答えは、違います。
最低賃金を確認するときには、計算に入れない賃金があります。そのため、給与明細の総支給額をそのまま使わないように注意が必要です。
最低賃金の計算に入れないもの
最低賃金を確認するとき、次のような賃金は計算から外します。
確認する場合、下記の図をご覧ください。

先ほどの例では、基本給190,000円、通勤手当10,000円、残業代30,000円でした。通勤手当と残業代を計算から外すため、最低賃金の確認に使う金額は190,000円です。
1か月平均所定労働時間が160時間なら、190,000円 ÷ 160時間 = 1,187.5円となります。
つまり、「総支給額が23万円だから大丈夫」と考えるのではなく、最低賃金の確認に使える賃金だけを取り出して、1時間あたりの金額を確認する必要があります。
飲食店ではここを確認しておこう
最低賃金が変わったとき、「アルバイトの時給を変更したからOK」で終わらせないようにしたいところです。アルバイト・パートだけでなく、正社員などの月給制も含めて確認しましょうね。
最低賃金は、厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」や、各都道府県労働局のホームページで確認できます。確認するときは、新しい最低賃金額だけでなく、「いつからその金額になるのか」という発効日も一緒に確認してください。
最低賃金は毎年見直されますが、変更日は全国一律ではないです。例年、秋ごろに新しい最低賃金が順次適用されますが、実際の日付は地域によって違います。
新しい最低賃金が分かったら、実際に変わる日を待つのではなく、アルバイト・パートの時給や正社員などの月給をあらかじめ計算しておくと安心です。
特に月給制は、1時間あたりの金額に直してみないと、最低賃金を上回っているか分かりにくい場合があります。早めに確認しておけば、給与を変更する必要がある従業員や、今後どのくらい人件費が増えそうかも事前に把握できます。
特に、次のような点は確認しておきたいところです。
- アルバイト・パートの時給
- 正社員など月給制の給与
- 最低賃金に近い給与になっている従業員
- 通勤手当などを含めて最低賃金以上だと判断していないか
- 1か月平均所定労働時間が正しく設定されているか
- 雇用契約書や労働条件通知書に書かれている賃金
- 給与計算ソフトの設定
- 新しい最低賃金額と発効日
記事の内容を、店舗で確認できる簡易チェックリストにまとめました。
また、給与を見直したときは、実際に支払う金額だけでなく、労働条件通知書や雇用契約書の内容も確認しておきましょう。
採用時に決めた時給や月給が書類に残ったままだと、実際の給与と書面の内容がズレてしまうことがあります。最低賃金の改定をきっかけに、賃金の内容や労働条件を見直しておくと安心です。
労働条件通知書については、こちらの記事で詳しくまとめています。
関連記事:飲食店の労働条件通知書|採用時の条件確認と書類の整え方
最低賃金が改定されるときは、「いくらになるか」「いつから変わるか」を確認して、その前に時給制・月給制の両方を計算しておく習慣をつくっておきたいところです。
人を大切にすることは、店を守ることにもつながる
最低賃金を守ることは、法律上必要なことです。
でも、私はそれだけで終わらせたくありません。飲食店で働いていたときも、経営する側になったときも、そして今、労務に携わるようになってからも、結局一番大切なのは「人」だと感じています。給与は、その人の生活に直結するものです。安心して働ける給与や労働環境を整えることは、従業員だけを守ることではありません。
人が定着すること。採用した人が安心して働けること。給与をめぐるトラブルを防ぐこと。お店への信頼を守ること。それは結果として、店や会社を守ることにもつながります。もちろん、最低賃金が上がれば経営する側は大変です。
だからこそ、人を大切にしながら、どうすれば店も続けていけるのかを考える。
私は、そんな店づくりを労務の面から支えていきたいと思っています。
応援していますよ!


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